がんびーの:雑談でも

映画のこと、本のこと、音楽のこと…。最近あったことをタラタラと綴ります。お暇な方、お付き合いください。

最近よかった映画(1/1〜1/22)

こんにちは。

今月も気がつけば23日。別に特別な日でも切りが良い日でもないんだけど、なんか思い立ってブログ書くことにしました。なんせ暇なもんで。

 

 今月は現時点で52本くらい映画見ました。

 

去年一年間で361本だったんで、中々良い出だしなのではないかと。今月見たやつ全部書くのは面倒なので、Filmarksで4.0以上つけたやつ書きます。(写真入ってるの特に良かったのです)

がんびーのさんの映画レビュー・感想・評価 | Filmarks映画

 

  

 岬の兄妹(2018) 片山慎三

足の悪い兄と自閉症の妹の話。足のせいで仕事を干され生活に困った兄が、自閉症の妹を利用し売春で金を稼ごうとするが…。

世の中のタブーをしっかりと切り取った作品。見ていて韓国映画の「oasis」を思い出した。よく完成させたな、と感嘆。演者も監督も、脚本書いた人も、すごいエネルギー使っただろうに。それだけ伝えたいテーマがあったのだと思うし、描くべきだと感じたんでしょう。

環境のせいにするなって言葉よく耳にするけど、これ見たらもうそんなこと言えない。てかそういうセリフ簡単にいう人が、よくない環境を作るんだろうな。

 

トラスト・ミー(1990) ハル・ハートリー

f:id:ch3rny12113:20210123124502j:plain

美しき爆破物語。
16歳で妊娠し高校中退。さらに不慮の事故で父を殺してしまったマリア。母に家を追い出されあてもなく街を彷徨っていた彼女が、世間に馴染めず常に手榴弾を持ち歩く青年マシューと出会う。

久しぶりに最高な作品に出会えた。ハル・ハートリーは「シンプルメン」しか見たことなくて、変わった映画だなぁと思ってたけど、これはドンピシャ。素晴らしく良かった。
マリアがどんどん可愛らしくなってくし、マシューはどんどん内面を見せてくるし、出会うべき二人が出会えてよかったのぉとエンディングでウルウルした。二人とも、いわゆる毒親の下で育ったわけだけど、それにしてはとても真面に成長してらっしゃる。二人とも少々捻くれてて変わり者だけど…。


近眼だから最後メガネかけるとこと、信頼の証って言って高いところから飛び降りるとこ好きです。

 

反撥(1964) ロマン・ポランスキー

幼少期のある出来事をきっかけに、男性恐怖症に陥ってしまった女性がどんどん病んでいく話。

非常に面白い。
というか作品としてのクオリティがめちゃ高くて好きだなとなった。
あんま映画理論的なのはわからんのだが、画角・ショットの繋ぎ・音楽・妄想と現実の曖昧さなど、ほぼ全てにおいてセンスいいなって感じ。特に画角はほんと何回か巻き戻しちゃうくらい良かった。
ドヌーヴが殺した男引き摺るシーンを床スレスレで撮ってマットが山になるのが良い。あとナイフ振り下ろすのがゆっくりなのも良い。ヒッチコックのサイコっぽくてね。目で始まり目で終わるのも良い。

ポランスキーが犯罪者級の変態オヤジってのもいいんだよな。

 

お引越し(1993) 相米慎二

f:id:ch3rny12113:20210123125006j:plain

両親が離婚前提の別居暮らしを始めてしまい、小学6年生のレンコはお母さんと暮らすことになる。突然の生活の変化に動揺するレンコ。どうにかして元の生活に戻そうと奮闘するのだが…。

激しく良かった。
幼き田畑智子が最高にキュート。デビュー作らしいんだけど既にキャラが出来上がってる。これも相米慎二の手腕なのか。是枝監督が師匠と仰ぐ巨匠らしいし。
なんで別々に暮らすん?って言うレンコの純粋な疑問が大人の心に刺さる。彼女の溌剌とした笑顔が一層感情を複雑にする。お母さんの気持ちもわかるしお父さんの気持ちもわかるけど、やっぱレンコの思いが一番素直で一番説得力あるよね。

ラストの電車のシーンが素晴しき哉。

 

沈黙(1962) イングマール・ベルイマン

神の沈黙三部作の三作目。
前二作は未鑑賞。特に繋がりはないようなので問題なし。
無駄な演出を削ぎ落としたことで、かなり直球な、でも難解な本作品。心してみたが、やっぱり難しかった。
ある姉妹と妹の息子の3人で海外に旅行に行くが、その道中で姉が体調を崩してしまい、急遽そこら辺のホテルに泊まることになる。ホテルの給仕係のお爺さんや他のお客の小人たちとは、海外ってこともあって全く言語が通じない。ただ、翻訳家の姉は、言語を使わず身振り手振りで給仕係とコミュニケーションを取って仲良くなる。でも妹はそんなことせず、言葉が通じないのを良いことに、姉の悪口を吐いたり、二人に秘密で男と遊んだり。

 

姉が翻訳家であることが物語の肝なのかなと思った。
異国人=神と仮定したら結構納得できる。
神と人間を結ぶ役割が、他国の言語と自国の言語を結ぶ翻訳家の役割なのかな。そう考えれば、姉が男に溺れる妹に対して「可哀想ね」と呟くのもわかる。そしたら息子はどういった立ち位置なんだろう。息子は純粋が故に、あの時代世間から軽蔑されてたであろう小人と仲良くなるし、給仕係からも彼の大切な家族の写真をもらう。子供は一番神に近い存在って意味か。

難しいテーマだけど、色々考察できる作品。

ベルイマンの映画は構図が神がかってるよね。

 

スワロウテイル(1996) 岩井俊二

芋虫の成長物語。
ずっと見たかった岩井俊二の傑作。
エンタウンという名の架空の街を舞台に色んな言語が飛び交う。完成度の高い世界観が、冒頭から一気に映画の世界に引き込んでくれる。ああいう世紀末みたいな街好き。
150分でちょっと長尺なんだけど、展開が二転三転するからあんま飽きなかった。小説を読んでるみたいだな。

役者が色んな言葉の勉強しなきゃで大変だったんだろうな。
アゲハの透き通る感じが素晴らしい。
 これを見た日からSunday Park鬼リピしてます…。
 

トウキョウソナタ(2008) 黒沢清

黒沢清の作品何気初めてかも。
カリスマ途中まで見てるから全部見ねば。

突然リストラされた夫。妻に打ち明けることもできず、仕事に行くふりをして一日中放浪する毎日。突然米軍に入ると言い出し家を出た長男。中東の戦争に飛ばされる。小学校の先生と喧嘩し、無視される次男。ピアノ教室に通いたいとお父さんに頼むが断られたので、お母さんからもらった給食の金をピアノ教室の月謝に回してバレてお父さんに殴られる。夫が公園の炊き出しに並んでるところを見ちゃった妻。リストラされたことを隠してたことに呆れる。長男を必死に止めるが結局彼は渡米してしまう。空き巣に襲われ良い感じになっちゃう。

悪化の一途を辿る家族に、月の光がさす。
ピアノ教室で天性の才能を持っていると賞賛される次男。ラストの彼の演奏が不思議と今までの不幸を帳消しにしてくれた気分。いつかは嵐が去って光が刺すのさ。最初と最後のシークエンスの対比が粋。
また観よう。
次男が階段から落ちるのめっちゃツボった。
 

殺人の追憶(2003) ポン・ジュノ

『犯人は必ず犯行現場に帰ってくるのさ』
1986年。田舎の農村で女性連続殺害事件が起こる。現地警官のトゥマンがソウルから派遣されたテユンと捜査に当たるのだが事態は難航していくばかり…。

やっと見れたポン・ジュノの傑作。
母なる証明もはよ見ねばやね。

これは実話であって、これが公開した時点で犯人がまだ見つかってなかったって情報を頭に入れてみるのが重要。それを知ってるだけで、ラストシーンの深みが1000倍くらいになる。もしこれ映画館で見てたら怖すぎてエンドロール見れないだろうな。

ソン・ガンホを中心とした警官たちのオフビートな会話があるおかげで重くなり過ぎず、ちょうど良い塩梅だった。ガンホのなんとも言えない表情が好き。それにしても当時の警察の適当っぷりはすごいな。冤罪だらけだろ。

民主化運動の話とかもちょいちょい入ってきて時代を感じた。
時々入れてくるスローシーンがポン・ジュノ節。
 

汚れた血(1986) レオス・カラックス

愛のない成功により感染する変な性病が蔓延するパリ。美人な彼女に飽きた主人公が彼女の元を離れ放浪の旅に出る。そこで出会った美女に恋をしてしまい…。
俺も死ぬ時ジュリエット・ビノシュジュリー・デルピーに見守られたいよ。アレックス、なんて豪華な恋してやがるんだ…。

ずっと見たかったカラックスの初期作品。一応三部作の二作目らしい。僕は他の二作観てないですけど問題なかったです。ホーリーモーターズ、ミスター・ロンリーはどちらも哲学的過ぎて入り込めなかったが、本作はスッと入り込めた。美人二人が出てる恋愛だった&映像が兎に角カッコ良かったからだろう。話の内容も恋愛が主だったのでわかりやすかった。愛は疾走って事なのかな。きっとアンナもアレックスのことを愛してたんだろう。

モダンラブの長回しとアレックスの芸に笑うアンナが好きすぎる。もちろん最後も。これを撮った時カラックスは26歳。この映像センスと音楽センスは天才としか言いようがない。ハネケとカラックスが理解されない天才ってイメージ。

また観よう。
 

鏡(1974) アンドレイ・タルコフスキー

f:id:ch3rny12113:20210123125348j:plain

やっと見れたタルコフキーの傑作。

彼が作るものはどれも傑作と言われているが、本作品は彼の自伝的な(もはや自慰的な)映画であるだけに、タルコフスキーを知るならこれを見ねば!というシネフィルが多いらしい。かなり難解な内容ではあるが、僕は何故か最後不思議と納得できたので点数高くした。まあ内容がいまいちでも鑑賞者を唸らせる映像がとまらない、というかそれしかないので高いんだけどね。

観終わって一番思ったのは、タルコフスキーが親の愛をしっかりと感じていないが故に、この作品で『自分に対しての親からの愛(特に母の愛)』を正当化させようとしたのでは?ということだ。作中で『君を見るとき僕は母を思い浮かべる』という気持ち悪いセリフが飛ぶのだが、ある意味これは本作品の核をついていて、男性及び人間が本能的に持っている『母性を求める欲求』が、現在・過去・大過去・夢の交差した記憶を飛び回りながら、妻と母(作中では同一人物が演じている)という二人の偉大な「女性」を作り上げているのではないだろうか。そしてその飛び交う断片的な記憶の架け橋として『鏡』が存在しているように感じた。

記憶は、その物を覚えようとするのではなく、その状況や感覚を覚えようとすると定着しやすいと耳にしたことがある。つまり、テストのために英単語を覚えるとして、その単語自体を覚えようとするのではなく、その単語を覚えようとしている状況を覚えるということだ。本作品における鏡の役割もそれに似ていて、常に描かれる記憶のどこかに鏡がある、つまりタルコフスキーは鏡という共通の物体を利用して母や妻を記憶し、そして結びつけていたのではないだろうか。その鏡を通して見える、燃える納屋や屋根の桟から滴る水。それがタルコフスキーの誇張された芸術的な記憶の断片であり、我々第三者はその記憶を垣間見ていると言える。

ラストは圧巻。バッハのヨハネ受難曲に合わせて、風が靡く草原にそれぞれの記憶の断片が集合する。タルコフスキーを産む前の母、幼いタルコフスキー、晩年の母、遠くにいるのが妻かタルコフスキーか父か…(わからない…)。このシーンがあるおかげで、それまでの難解な2時間弱がまとまった。

途中途中で入る各戦争の記憶は果たしてどういう意味があるのか。いまいちわかんなかった。それが時の経過を表しているのか。タルコフスキーの表面の記憶的な。

もう一回見よう。
 

ファニー・ゲーム(1997) ミヒャエル・ハネケ

f:id:ch3rny12113:20210123125601j:plain
「虚構は現実なんだろう?」
「なんで?」

「虚構は今見ている映画」

「言えてる」
「虚構は現実と同じくらい現実だ」

悶絶級の傑作。
前情報なしで見たんだけどそれが本当に正解だった。
いやぁ良かった良かった。

最近映画と現実の境目って何なんだろうなって考えることが結構あって、(まあ端的に言えば「映画は映画でしょ…」ってなるんだけど)僕のその終わりの見えない問いを度ストレートについてきた感じ。最高す。
後味悪いとかグロいとか賛否分かれる作品だけど、ぶっちゃけそのグロ要素っていうか殺人要素的なのは、ハネケが現実と虚構の関係性を視聴者に伝えるために、僕らを画面の中に引き込む材料として一番手っ取り早かっただけのかなと思う。ただグロい映画を作りたかったんじゃなくて、視聴者になるか共犯者になるか、果たしてその境目はどこなのかを見てる人に問うてるのかなと。

とりあえず最高な映画。

 

前半のイライラのひっぱりが堪んない。
 

白いリボン(2009) ミヒャエル・ハネケ

第一次世界大戦直前のドイツ北部の小さな村で奇妙な事件が次々と起こる。犯人は誰なのか? 憎しみ、抑圧、嘘、暴力が蔓延する村に救いは来るのか。

かなり良かった。
今まで見たことない戦争映画。

ここで描かれている子供たちが、後にヒトラーの下で大量殺戮を行う人間なわけだが、何故そういう人間が生まれてしまったのかわかる気がする(そんなのドイツに限った話じゃないけれど)。
とにかく村の大人達の感情がひん曲がっていて、それに抑圧される子供の人間性も変な方向に成長してる。牧師であり神学を教える先生でもある父に理不尽に怒られ、父の大切にしていた鳥を殺す娘。あの行動が全てを物語っている。抑圧され罵倒され殴られた人間がまともになるわけない。親の憎しみや嘘は子供に伝わるもんだとしみじみ感じる。

ドクターが助産婦を罵倒するシーンは言葉が酷すぎて笑ってしまった。きっとあの医者は十数年後にお偉いさんになってT4作戦を指揮しているのだろう。
結局胸糞な感じで幕を閉じたが、作られるべき映画作品だったと思う。

ハネケ好きです。
 

最後に

絞ったつもりだったけど案外書いちゃいました。
次からは一週間に一度にしようかな。
 
本とか音楽とかもしたいですね。
一つの映画作品とか一人の監督に焦点を当てて書くのも良い。Netflixドラマもいいな。
 
まあまた。
 
それでは失礼します。